映画「万引き家族」の考察まとめ

映画『万引き家族』は、是枝裕和監督が描いた、現代社会における家族の形とその絆をテーマにした作品です。
家族という概念が変容し、血縁関係を超えたつながりを描く本作は、深い人間ドラマが展開されます。
今回は、その映画の中で描かれるテーマについて考察します。

目次

考察① 家族の形の変化

本作が描く大きなテーマの一つは、「家族」の形です。
物語の中で、血縁関係に基づく「家族」ではなく、犯罪や困難を通じて結びつく「家族」が描かれています。
現代社会では、核家族化が進み、家族が一緒に過ごす時間が減少しています。
そのため、家族の形も多様化してきています。
本作では、主に万引きなどの犯罪を通じて絆を深める人々が登場します。
血縁にとらわれず、強い絆で結びついた彼らは、時に社会的な倫理や道徳に反する行動を取りますが、その中で見せる人間らしさが心に残ります。
これにより、家族というものが必ずしも血縁関係に依存する必要はなく、心のつながりこそが本当に大切なのではないかという問いを観客に投げかけます。

考察② 登場人物の成長と変化

登場人物たちが経験する成長と変化も、この映画の重要な要素です。
例えば、ショータという少年は、物語を通じて自分の責任感を強く感じるようになります。
最初は、リリー(リーダー的な存在)から指示を受けて万引きに参加していたショータが、やがて自分の行動に対して責任を持つようになる過程は、成長を象徴しています。
ショータは、妹に対して責任感を持つようになり、最終的には自らの道を選んで決断を下します。
また、リリーの考え方に疑問を抱き、彼の行動に対して複雑な感情を抱く場面も印象的です。
これは、少年が大人に成長していく過程を象徴的に描いています。
一方で、リリー自身も自身の行動や言動に対して、最終的には決別するような場面が描かれます。
こうした登場人物たちの成長や変化は、映画のテーマに深みを与える重要な要素となっています。

考察③ ラストシーンの希望と絶望

映画のラストシーンでは、登場人物のそれぞれの結末が描かれますが、その中でも特に注目すべきなのは、リンちゃんのシーンです。
リンちゃんが再び「家族」の元に戻される場面は、希望と絶望が交錯する瞬間です。
リンちゃんは、最初は不安定な立場にあり、周囲の人々と繋がりながら生きていくことになりますが、最後には再びその環境に戻されます。
そのシーンが示唆するのは、彼女が再び同じ状況に戻ることで、物語は一旦の終息を迎えるものの、根本的な問題は解決していないということです。
映画全体を通じて、解決しきれない問題が積み重なり、ラストでそれが顕在化します。
しかし、その後も生活は続くという現実感が、この映画をより深く、切なくしています。
希望が絶望の中に見え隠れするラストシーンは、観客に強い印象を残します。

まとめ

『万引き家族』は、家族というテーマに対して深い問いを投げかける作品です。
血縁を超えた絆、登場人物の成長、そして希望と絶望が交錯するラストシーンは、観客に強烈な印象を与えます。
映画を通して、家族の形や人間らしさについて考えさせられ、観る者に深い感動を与える作品であると言えるでしょう。

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