映画「この子は邪悪」の考察まとめ

映画「この子は邪悪」は、細かなディテールやシーンごとに深い意味が隠されている作品です。
表面上は穏やかな家庭の風景が描かれていますが、その裏には登場人物たちの心の闇や、過去のトラウマが反映されています。
今回は、映画のいくつかの重要な要素に焦点を当て、作品の深層に迫る考察を行います。

目次

考察① 鏡やスリガラスの使い方

映画中、非常に目を引くのが「鏡」と「スリガラス」の使い方です。
一般的な家庭のシーンには、しばしば鏡やガラスが登場し、キャラクターたちの姿が映ります。
しかし、「この子は邪悪」では、ほとんどすべてのガラスがスリガラスであり、鏡は存在しません。
これには重要な意味が隠されていると考えられます。

物語の中心にいるルナは、実は本物の「久保ルナ」ではなく、魂が移行した別の少女、「鮫川愛佳」だという可能性が示唆されています。
彼女が鏡に映ることで、自分の本来の姿を確認し、過去の記憶や自己認識が混乱してしまうことを避けるために、鏡が排除されていると考えられます。
鏡がないことで、ルナは自己認識を曖昧にし、彼女の過去に触れることなく生活を続けることができます。
鏡に映った顔に驚くシーンがあることからも、この意図が強調されているのです。

考察② 料理とろうそくの意味

次に注目すべきは、料理と誕生日のろうそくに関するシーンです。
ルナが家族と食事をするシーンでは、料理を褒められた後、ルナが「料理をやってみようかな」と言うと、家族の一員である士郎が「やらない方がいい、人には向き不向きがあるからな」と返します。
この言葉に隠された意味は、ルナが料理をすることで火を使うことが関係しています。

火という存在は、映画全体を通じて重要なテーマとなります。
ルナは過去に火傷を負った経験があり、火を使うことに強い恐怖を感じています。
士郎はこの恐怖を避けるため、ルナに火を近づけさせないようにしているのです。
火に関する描写は、トラウマの象徴でもあり、ルナが自分の過去と向き合わせられないようにするための配慮でもあります。

さらに、誕生日のシーンでもろうそくが使われていないことに注目すると、普通は誕生日ケーキに並べられたろうそくを吹き消すシーンがあるはずですが、この映画ではそれがありません。
ろうそくを使わないことで、火を扱わない安全な空間を保つ意図が読み取れます。

考察③ 催眠とトラウマの関係

映画では、士郎がルナに催眠をかけるシーンが登場します。
催眠を使ってルナの心を操り、彼女の記憶や感情をコントロールしようとする士郎の姿は、非常に不気味であり、彼の狂気が浮き彫りになります。
催眠は単なる精神的な操作にとどまらず、ルナの過去のトラウマに深く関わっているのです。

ルナが過去に火傷を負った経験は、士郎の催眠によって再び呼び起こされます。
催眠の中で士郎は、ルナに対して恐怖を植え付け、トラウマを意図的に強化しようとします。
これは、彼がルナを支配するための手段であり、彼女の心に深い傷を与えることで、自分の思い通りにさせようとする試みです。
このような操作が繰り返されることで、ルナは催眠から解けることなく、士郎に依存する状態が続いてしまいます。

また、ルナが抱えているトラウマを利用することで、士郎はその弱点を突こうとしているとも考えられます。
催眠はその効果が長期間続かないと解けてしまうため、鈴のついたうさぎのぬいぐるみを使って暗示を持続させているのです。
このアイテムが示すように、士郎の催眠は継続性が重要であり、彼の執着の深さが感じられます。

まとめ

映画「この子は邪悪」は、表面的な穏やかさと裏に潜む恐怖が交錯する作品です。
ルナを中心に展開される物語には、鏡やスリガラスの使い方、料理や誕生日のろうそく、そして催眠によるトラウマの操作といった細かなディテールが散りばめられており、それぞれが物語の深層に繋がっています。
特に、ルナの過去や士郎の執着がどのように彼女の生活に影響を与えるのかが、観客に深い印象を与える要素となっています。

これらの考察を通じて、映画が描こうとするテーマやキャラクターの心情に迫ることができ、再度映画を観る際に新たな視点を提供してくれることでしょう。

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